大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2058号 判決

原審は第一事実として、被告人が昭和二十二年六月十九日頃から、同年十一月頃までの間茨城県鹿島郡鉾田町一六一五番地渡辺憲太郎方で麻薬である塩酸モルヒネ末三〇瓦ヘロイン末三、五瓦位、燐酸コデイン末二瓦、ヂオニン〇、七瓦、ドーフル散一〇五瓦及び塩酸コカイン末二一瓦を不法に所持した事実を認定し、その証拠として、被告人の原審公判廷における供述、証人武田土、同田口健蔵の各供述、被告人に対する司法警察員の職務を行う麻薬取締員作成の第一乃至第三回供述調書、同領置調書、同検察官作成の供述調書並に同麻薬取締官田口健蔵の麻薬取扱者の免許等に関する回答書の各事実記載及び押収に係る麻薬類(認第一号乃至四号)の存在を掲げていて、所論の塩酸モルヒネ末三〇瓦、ヘロイン末三、五瓦についてはその他の麻薬のように押収こそされてはいないが前記証拠中被告人の供述並供述記載中に被告人が昭和二十二年五月樺太から引揚げる際にその他の麻薬と共に持ちかえり、当時被告人は麻薬中毒患者だつたので同年十一月迄に塩酸モルヒネ三〇瓦を毎日〇、二瓦位宛自己に注射して使用し尽し、ヘロイン三、五瓦も一部は自己に注射して使用し中一瓦は他人に売渡したとあり、被告人が同時に樺太から持帰つた押収されているその他の麻薬の存在がその補強証拠となるものと解せられ被告人が右塩酸モルヒネ及びヘロインを所持していたことは充分認められるから、原審には被告人の自白を唯一の証拠として事実を認定した違法は存在しないものというべきである。蓋し、憲法第三十八条第三項、刑事訴訟法第三百十九条第二項によつて、被告人の自白を唯一の証拠として有罪の言渡をすることが禁止されているのは、自白偏重の弊害を避け、虚無の事実認定をなからしめんとする趣旨であるが、それだからといつて、これを補強する証拠は必ずしも犯罪事実の全部に亘ることを要せず、被告人の自白と相俟つて被告人の自白が真実であるとの心証を形成するに足るものであれば十分であると解すべきであり、前記被告人が持ちかえつて押収に係る麻薬の存在は所論の各麻薬を被告人が押収の麻薬と同時に持ちかえつたが、麻薬中毒患者であつたため、殆んどこれを使用し、一部を他人に譲渡したという被告人の自白の真実性を補強するに充分であるからである。従つて所論は理由がない。

(控訴趣意)

第一点

原審判決は判決に影響を及ぼすことの明かな法令の適用を誤つたものであるから破棄されるべきである。

即ち、原審判決の理由第一中には「被告人は………………昭和二十二年六月十九日から同年十一月頃までの間茨城県鹿島郡鉾田町一六一五番地渡辺憲太郎方で麻薬である塩酸モルヒネ末三〇瓦、ヘロイン末三、五瓦位………………を不法に所持し」、

第二………………」と表示してあるが、

右塩酸モルヒネ末三〇瓦、ヘロイン末三、五瓦に関する限りは原審の記録上成程被告人の供述丈は現われては居るが之れが補強となるべき証拠は人証、書証、物証、其の他何れの証拠も全く無いのに原審判決は漠然と右事実を認定挙示し其の余の事実と相俟つて併合罪として処断している。

右は正しく憲法第三十八条第三項及刑事訴訟法第三百十九条第二項により有罪の認定は出来ないのに之れに違反して有罪の一部に認定したことに一見明瞭な処である。然らば右不法な認定事実を含めて量刑した本件判決は判決に影響を及ぼすことの洵に明らかな法令の適用であるから当然破棄せられなければならない。

依つて控訴理由第一点に之れを取挙げる訳である。

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